お料理小ネタ
◆リデルとウォーレン
「リデル、今日はリデルが私に教えてください」
「私が、先生に、ですか? なにを……」
「お料理です」
「はあ……先生、料理に興味があったんですか? 私はてっきり皆無かと……」
「ええ、あまりなかったんですけど。毎日リデルが作っているのを見ていたら、面白そうかな、と」
「じゃあ、今日の夕飯を一緒に作りましょう」
「はい」
「……不思議です。鍋のふたが飛んだりオーブンが爆発したりととんでもない過程だったのに、なぜまともなものができあがったんでしょう……」
「まあまあ、結果良ければすべて良し、ですよ。さあ、いただきましょう」
「はい」
「でも、本当にうまくできてよかったです。今度から食事は交代制に……」
「…………うっ……」
「あ、あれ……? 変ですねぇ、ちっともおいしくない……」
「……いえ、あの……おいしくないというか、この味は……」
「リデル、心当たりが?」
「……先生、まさか私の見ていないところで薬草を入れたりはしませんでしたよね?」
「薬草ですか? 入れてませんよ」
「……ですよね」
「ああ、そうか。このスープ、薬の味に似ているんですね」
「ええ……昨日作り方を教えてもらった解熱薬と同じ味です。こっちのサラダは……うっ、傷薬のような味が……切って盛り付けただけなのにっ……」
「リ、リデル、大丈夫ですか?」
「なん、とか……」
「どうしてこうなってしまったんでしょう……」
「わかりませんが……とにかく、先生。先生は、今後、料理禁止です」
「……はい」
先生の料理過程はぶっ飛び現象。そして見た目はまともなのになぜか薬味になる。(※とてもまずい)
* * *
◆リデルとシルヴィア
「ねえリデル、お料理って楽しい?」
「ええ、まあ。趣味ですので」
「……ねえ!」
「は、はい?」
「私にも教えて!」
「え、えぇー……いや、それは……」
「教えて、教えてよー! 私もお料理してみたい! お城じゃさせてもらえないもの!」
「……それはまあ、あなたは姫君ですから……」
「でもやってみたいの! ね、いいでしょ、教えて!」
「……わかりました」
「ありがとう、リデル! あ、私できればリデルのいつものクッキーが作ってみたいな!」
「……材料のストックはありますし。ではそれでいきましょう」
「はい! ご指導、よろしくお願いします!」
「……なに、これ」
「……クッキーです。おそらく」
「それはたしかにクッキーなんだけど! なんで紫色!? よく見ると緑色とかも混ざってるし! なんかぼこぼこして今にも破裂しそうだし! リデル、私作り方間違えてないよね!? それともこういうものなの!?」
「いえ……そんなはずは……。ま、まあ大事なのは見た目ではなく味ですから。こう見えて味はまともかもしれません」
「ええぇ!? いやいや、これはだめだよ、待ってリデル、待ってー!」
「いただきます。……うっ……」
「リデルー!? だから、だから待ってって言ったのにー! お薬!? いえお医者様!? どうしようリデルー!!」
シルヴィアはポイズンクッキング。見た目も味も凶悪なので要注意。
* * *
◆リデルとカイル
「リデルって完全自炊?」
「ええ、まあ……時折、知り合いがやっている軽食堂へ行ったりもしますが、基本的には」
「大変じゃね?」
「好きでやっていることですから」
「そんなもんか?」
「ええ。それに、昔からやっていることですから。すでに日常の一部です」
「なるほどなー……って、昔から? それいつから?」
「先生に引き取られて一年しないうちでしたから……五歳くらいでしょうか」
「ちっさ! え、そんなガキの頃から料理ってできるもん!?」
「もちろん、ひとりではなく料理の先生についていてもらいましたよ。五歳の子どもが包丁の扱うのは危険ですから」
「あ、だよな……はー、びっくりした。いや、でもじゅうぶんびっくりだな。五歳とか、俺ダチと遊んでた記憶しかねーや」
「それが普通だと思いますよ」
「……なあ、俺にもちょっと教えてくんね?」
「え……」
「なんであからさまに嫌そうなんだ」
「……いえ。まあ、そうですね。やってみましょうか。クッキーなら、材料ありますし」
「おー、できたできた。いいにおい。ちょっと形はいびつだけど」
「いえ……じゅうぶんです。味も問題なし。立派です」
「え、ちょ、なんでそんな熱入ってんだ? 教えてもらいながらやったんだからこんくらいは当然の出来だろ?」
「ああ、いえ、すみません。ちょっと以前色々ありまして……」
「色々……?」
「さあ、食べましょう。できたては特に美味しいですよ。お茶を入れて持って行きますので、カイルは先にクッキーを運んでください」
「お、おう……」
カイルは超普通。だから安心。つまんないとか言うなし。
END.